秋の足音ーチコの獲物から見たネズミのphenology
2007年 10月 13日
Canon EOS Kiss Digital X, Carl Zeiss Distagon 1:2.8/25 T*
爪は,多分チコのものが抜けたと思われ,末っ子が発見してネズミさんの上に乗っけていました。
Canon EOS Kiss Digital X, Carl Zeiss Distagon 1:2.8/25 T*
チコが狩ってくるクマネズミの死体が庭に転がると云うことは,ネズミ類における秋のアクティビティ・パターンの増加に起因しているわけで,我が家では,秋の本格的な到来を意味するものです。
ここで,過去のチコのマウス・ハントに関するエントリーを見てみましょう。
「本日の収穫」(2006年11月1日,クマネズミ幼獣),
「本日の収穫」(2005年12月19日,ハツカネズミ)
Never ending hunting ー 終わりなき狩り(2006年7月8日,ハツカネズミ)
「捕獲申請無許可」(2006年10月17日,ヒメネズミ)
「機嫌の悪いセンパイの置きみやげ」(2006年10月28日,クマネズミ)
「電気温水器とクマネズミと耳とんがり警備隊」( 2006年11月19日,クマネズミ(糞))
「ねずみ算」( 2006年11月28日,アカネズミ)
「違いの分かる男ー我が名は鼠猟師」( 2006月12月2日,アカネズミ)
ネズミを獲る猫は,既に無形文化財かも。
ここにおいでの方々は,非常に興味深いコメントを頂けるので,お気に入りの戦利品を咥えたチコの画を貼っておきます。ナッチとユッチがチコの帰りを心待ちにしているのは,こういうお土産を持って帰ってくることがあるからかも知れません。
成獣は力が強く抵抗するので,ついつい直ぐに仕留めて,直ぐに死ぬ→動かない→飽きる→庭に放り出す という流れになるのに対して,幼獣は力が弱いので,気が付いたらチコは家の中に持って帰ってきて,ぽとっと落とす→チコは飽きて無気力相撲→ネズミ逃げる→ナッチとユッチが追っ掛ける ということになります。
通常秋口からの繁殖期がだらだら続いて,年を越えて梅雨前まで一山のパターンを示した後,沈静化するのですが,個体群の増減や活動性(アクティビティ・パターン)もそれに代替一致します。照葉樹林帯では繁殖が終了する梅雨前頃~夏場にかけて,アクティビティ・パターンは最小化します。これは,どういうことなのか,実体はよく分かっていませんが,個体群が最小化している可能性が高いとともに,移動性なども最小化するようです。
もちろんこの話は人間の供給資源に依存しない森林性のアカネズミやヒメネズミなどで基本のパターンです。ちなみにアカネズミは,体温を20度台に下げてdayly torperと呼ばれる代謝を下げる生理的な技を持っている個体群が存在するのですが,夏眠する可能性も指摘されています。野外では草食性のハタネズミやスミスネズミを除くと,ほとんどのネズミは,種子・昆虫を基本的な餌とするわけですが,虫をやっている方は,照葉樹林で,夏場,昆虫のアクティビティも下がることを理解されているはずです。これは,春に生まれた個体が産卵し,卵〜初齢幼虫のステージに入ったりするのが夏なので,人目に付かなくなる種が昆虫では多いと云うことかと思います。もう一つの餌である果実やドンクリが成る時期は,晩夏過ぎをまたねばなりませんから,当然,餌も最小化することになります。
この時期,森林性野鼠で,樹上利用性の高いヒメネズミなどでは,採餌空間を樹上に移しますが,林床を数キロ移動する平面移動性の高いアカネズミなどでも,森林ではとんと姿を見ることが出来なくなります。秋口に繁殖してどっとアクティビティが上がるまでの夏の間,彼らは何処に行って何をしているのか,実ははっきり分かっていないのです。
クマネズミは,汎世界種でもあり,森林性ではなく住居周辺を利用する半野生状態のネズミですが,本来は樹上利用に長けた森林性野鼠です。基本的に,完全に人間の住居環境にだけ依存して生活している場合は別にして,周辺の農耕地や森林から通ってくるのが基本であれば,アカネズミやヒメネズミのアクティビティパターンに類似した季節性を南九州ではある程度は示すことになります。
農耕地依存型のハツカネズミで7月に獲れていることを除けば,ほとんど秋口から冬季にかけてです。そして,2月~夏季までは,チコの戦利品としてネズミ類が上がることはありません。この辺りが,大きな森林を数キロ先に控えてそこから河畔林がずっと繋がり,耕作地などもまだ点在する住宅環境周辺のネズミの年間アクティビティです。森林性のノネズミも,出張ってきていることも興味深いです。
また,例の事件も実は,問題化してTVが入ったのは冬です「不二家埼玉工場周辺環境をネズミから読み解く」( 2007年01月26日)。
昔,猫を使ってのネズミの調査が出来ないかと思ったことがありました。夏季の照葉樹林で全く罠に反応しなくなったネズミ個体群を前に,それこそ猫の手を借りたいなと思ったわけです。今時は,許されないペットによる撹乱ですが,人家に侵出する害獣であるイエネズミ3種(ハツカネズミ,クマネズミ,ドブネズミ)なら,何ら問題はないでしょ。この辺り,チコのようにがせっせと捕獲を誇示してくれる調査員が,数頭いて,データが集積できれば,学会の小ネタぐらいなら作れそうです。
不○家さんの工場と大学周辺でやれないかと,あの事件の時思ったものでした。
潜在植生が夏緑樹林帯に位置する地域では,夏場の森林性野鼠の落ち込みはありません。むしろ個体群は極大化します。そして晩秋から初冬にかけて個体群は減少し,2月~3月中旬ぐらいまでアクティビティは最小化します。これは一般的な認識としては理解しやすいのですが,ここで問題なのは,照葉樹林帯における森林性野鼠の夏季の最小化とアナロジーで語って良いのかと云うことについては,十分なデータがないということです。今回チコが冬季にアカネズミを捕獲していますが,こういう住居環境への侵出が,むしろ照葉樹林内から森林性野鼠が捕獲できなくなる時期ではなく,比較的密度が上昇しているときに生じていることを見ても夏緑樹林の動態とは,かなり異なる気がします。
夏緑樹林から森林性野鼠が姿を消す時期には,多少は追跡が可能で,どうなっているかということについて,僅かながら知見を持っています。多少想像が入りますが,いわゆる他の哺乳類同様,里に下りて,要するに農地周辺に身を隠したりしている個体が観察されていますがそういう動きで全て説明が付けられるかは意見が分かれるところでしょう。また,北海道を含めた地域でも,森林性野鼠は,リスの仲閒などと違って冬眠をせず,雪の下に坑道を造って活動しています。クマネズミも南方系なので,いわゆる冬季のハイバネーション(冬眠)はありません。一年中活動できることが前提となります。
ちなみに私はチコちゃんの大ファンです。
素敵なところにお住まいのようですね。
コウモリも,大翼手(オオコウモリの仲閒)は,可愛いですけど,普通のコウモリ(小翼手)は,お世辞にも一般的に見て可愛いとはなかなか思えないと思います。確かに見ようによっては可愛いと感じる人もおられるかも知れませんので,飽くまで一般論ですが。
状況から見てアブラコウモリかと思いますが,これは市内でも古家の板壁などにはおります。郡部の家屋内で期待したいのはヒナコウモリですね。これは,割と大きなコウモリで,公式には南九州で生息記録が出ていません。もちろん,情報はあります。もしも機会があれば,翼長か体重を測っていただければ,推察は出来ると思います。関東以北ではかなり家コウモリしています。
チコはまだ,コウモリは咥えてきたことがありませんので,羨ましいです(笑)。