Coprophagous〜食糞(性)

Coprophagous〜食糞(性)_b0060239_2349196.jpg
用語として,いわゆる異常行動のscatophagy (食糞症) とは違います。とりあえず‘Coprophagous’としました。もっとも,食糞には,ペット相談でイヌなどで飼い主さんが困って相談するような話もあります。また,糞食性のコガネムシから,大腸の共生細菌によるセルロース分解成分を再吸収するため,自分が出した糞を食べるというのもあります。これは,ウサギや草食性の齧歯類など半数能力を持たない小動物の適応の話。
 他の動物,他の個体の糞を食べるというのは,雑食性のイノシシなどでは,普通に見られます。有名な話が,イノシシによる農作物被害防除を狙って,ライオンやトラの糞便を忌避するのではないかという実験をやったら,その実験対象となったイノシシの個体がビビって逃げ出すかと思いきや,ご馳走様!とばかりに二大肉食獣のウンコを綺麗に平らげたということです。イノシシは,「食えない奴」じゃなくて,「食える奴」だったということです。ここでは「食える奴」の方がくせ者。ちなみに,この方法は,シカでは有効だったかなと記憶しております。



 で,ヤクジカの話なのですが,属性理解として,彼らには,落葉を採餌する行動が知られています。これは,日本産のシカにおいては,私は観察したことがありません。また,私は一次資料を見たことがないのですが(論文化されているか疑問),ヤクジカについてはドングリを採餌利用するという研究者もおいでです。ちなみに,アマミノクロウサギの植生にスダジイが入っていて,これをドングリを食べると勘違いしているテキストを見たことがありますが,少なくともキュウシュウノウサギ(いわゆる全国にいる野ウサギ)はどんなに食べさせようとしてもドングリを食べませんし,アマミノクロウサギについても堅果を拾い食いする話,或いは食痕は見たことがありませんので,ややこしいです。ヤクジカについてもこの点については,私は確認できていないので,どなたかこの問題についてご存じの方教えていただければ幸いです。
追記-このエントリの直後,直接シカが堅果を食べていることを確認。文献などもあるようですが,シカのコアな研究者においては常識というレベルの話のようです。

 さて,ヤクジカがヤクシマザルの側を離れずヤクシマザルが樹上での採餌や,引き落としたものを目当てにして,採餌するのを,私も今から15年以上前に映像で見て知ったのですが,こういった森林落下物を食べる行動が,少なくとも近年急激に増えたのか,ずっと昔からやっていたことなのかと云うことについても,論議は難しいようです。
 でも,少なくともヤクシマザル周辺で落下物を採餌するという行動が結構一般的な状況にあって,そのヤクシマザルの糞便内容によっては,口にしてしまうヤクジカが現れても,そんなに驚くことではないのかも知れません。いや,実はすげ〜驚いたけど。
 また,上記の話を知らずに見れば,ペットの困った行動と同じレベルの話にしか見えないと思います。
 で,この若い個体は,季節に移動して適正な採餌場所で採餌するようなスキルも知識も十分ではなく,ヤクシマザルへの依存傾向が強かったために,そして,食えそうな未消化物を糞塊の中に見いだした故,当たり前の行動としてCoprophagousをやってしまったのか,観察例もこれっきり,個体の履歴も分かりませんので,想像の域を出ませんが,少なくとも,アスファルト道路の上で,チェックしておいた糞塊でなかったら,まさかヤクシマザルの垂れ落としたウンコをシカが食っているなどと云うことは,夢にも思わなかったと思います。
 この行動自体が,屋久島におけるシカの高密度化や餌植物の欠乏,裏返せば希少野生植物の採餌被害の重篤さを意味することにはならないと思いますが,非常に気になるところではあります。十分な観察と検証がない段階で「いや〜,食べるもの無くなって,とうとうサル糞にまで手を出したか」などとは,簡単には考えて欲しくないのであります。

 実際,「土中の中の確認のしようもないもの」を食べているという観察例で止まるのは,多くの野生動物の調査をやっていて普通です。高解像度,高倍率,高感度のビデオカメラで口元をずっと狙っていたら,ひょっとして何十回かに1回は,何を食べているのか分かる可能性もあるかも知れませんが,相当大変でゴザイマス。世の中,なんでも見れば分かると思いこんでいる人も多いようですが,そもそも野生動物の行動における肝心の部分というのは,神の視座じゃないと無理な部分が多く,これを多くの研究者は,個体識別と,空気のように無視してくれる努力,そして,棘だらけのブッシュに動物が突っ込んで行っても,崖を下っていっても,範馬勇次郎のように,躊躇無く身をダイプさせてそのまま追うという鉄の意志のような研究者魂で明らかにしてきたのであります(ホントか?)。ハードウェアにより解決できる部分もありますが,自動撮影や無人撮影も,万能ではありませんので,相当な努力が必要となりますし,それらが使える動物は限られています。

 原画は,ぎりぎり口元のお猿さんのウンコが写っております。普通に見ても分からないと思ったのですが,お食事中の方もおいでかも知れませんし,画像検索で,類似の画が一杯出ているわけではないので,「鹿男あをによし」(チャレンジングなファンタジーSFドラマですが,あの鹿の造形とショボイSFXモドキには脱力。)とか鹿に世間の耳目が集まっている折,変な使われ方?してもなんですので,とりあえずモノクロ化。

ちなみに,人間のそっち系の話については,ここにその道の権威(麻酔学ですよ,麻酔学)の大先生による深遠なるエントリーがあります。私もいつものように,余計なウン蓄による書き込みをしております。頭がガキの証拠なんでしょうけど。
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Commented by hamarie_februar at 2008-03-01 16:23 x
初めてその行為を目撃したときには非常にショックだったのですが、
愛しそうにモグモグ食す口元に、幸せを感じてしまうのに、そう時間はかかりませんでした。

健康チェックの意味もあり、それの中身を確認するのも日課でしたし、ネコさんと同居していたときは、ワタシの中でのそれは忌むべきものという位置づけでしたが(ネコさん自身がそれに対して砂をかけるなどの仕打ちをする)、それに対する感覚が根本的に変化しました。部屋に黒くて丸いものがころがっていたら、何か宝物を見つけたような気分になりましたし。

リンク先のコメントも読ませてもらいました。ご紹介の故事?には、それに対する愛しさは見出せなさそうですね。

うさぎ飼いだった者として、食糞の話題に食いついてみました(^。^)
Commented by complex_cat at 2008-03-01 16:52
hamarie_februaryさん,草食獣の糞と肉食,雑食獣の糞は同じに出来ません。まぁ,サルのは,植物しか入っていないモノは不潔な感じはしません。人のはやはり,酷い代物と感じずにはいられません。某大学の熊研は,大抵新人を騙してエゾウサギの糞粒を食べさせます。そんなに非人道的な行為ではないと思いますが,人糞やサル糞とかだと状況は違うと思います。うさ糞から得た感覚で全てを見るのは,少々危険です。逆に猫の砂をかけるという「仕打ち」から忌むべきモノという感覚も,私には少し分かりかねます。臭いから埋める,汚いから埋めるではなく,天敵に追撃されないようにするための行動です。私の視線,立ち位置について混乱させてしまったかな。
Commented by complex_cat at 2008-03-01 18:03
ウサギ君などの自己食糞行為は,反芻と同じようなものだと思います(と書いたつもり)。汚いという感覚は,動物屋なら皆無だと思います。でもって,その他の動物の食糞行為については,ある意味なんてこと無いのですが(鹿によるサルの食糞に驚いたというのは情緒的な話ではないのです),人間のそれだけは,できれば,ちょっと簡便というのが,私の感覚です。身内のハードな介護経験を重ねるうちに,それも消滅していくと思いますが。自分の子供のウンコは,今でも汚いと思いませんから。食えと云われれば,ちょっと困るけど。赤ちゃん時代のなら,舐めてチェックとか,できんことは無さそう。
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by complex_cat | 2008-03-01 08:00 | Wonderful Life | Trackback | Comments(3)

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