殺人者への備え
2008年 03月 24日
春になれば,花は開きます。どんな境遇にあっても花を咲かせる可能性はあります。生きている限りは。自分以外の人間を不幸に陥れることで,自分の不遇を相対化しようというのか。あまりにも卑怯かつ薄汚い稚拙なエゴと暴力性が充満した犯人の手により,二度とご自身の運命を咲かせることが出来なくなったお二方とそのご遺族に,心からお悔やみを申し上げます。
SONY α700, Schneider-Kreuznach Retina Xenon 1:1.9/50mm(SILKYPIXによるRAW現像からの等倍切り出し)
このブログ・カテゴリの趣旨は,事件枚挙ブログではないので,TBもしていません。犯人像の分析や一市井の人間の感想とは異なることをあらかじめお断りしておきます。少々の格闘技をかじっていても,本気の殺人者や暗殺者に対応するのは難しい。ただ,この事件でセルフディフェンスにおける一つのキーワードが見えます。
それは,首,頸部という体の部位が,刃物使用を含めて,攻撃の急所であるにもかかわらず,人は思いの外,無防備だということ。そして,僅かな期間で,殺人を意図して殺人者としての自己訓練をなした兇人は,頸部を一撃で攻撃するという行為の致命的効果を認識するとともにそれにある程度熟達したことが感じられます。
首への加撃方法は,肉食獣の常套,武術でも秘中の秘,十分性格の分かっている弟子にしか披瀝されない技が多いのです。喉は筋肉や骨で守られていない部分が多く,頸動脈や気管など,傷を受ければ致命傷になるものが細い空間に集められています。
某剣術の流派の秘伝にも見たことがあります。相手のディフェンスを封じて鎧の隙間から小刀突き入れる。勝負が早いのです。
柳生新陰流を学ぶ―江戸武士の身体操作 (剣道日本)
赤羽根 竜夫 / / スキージャーナル
ISBN : 4789921077
劇画「あずみ」で,彼女の台詞に「おまえたちは,鎧を着ている。だから首を切って一瞬でとどめを刺すことが出来ないから絶命するまでに苦しむことになる。だから覚悟してかかってこい」という旨の台詞がありました。フィクションとはいえ,圧倒的な強さと慈愛の心を持つ美少女剣士のみが発せられる台詞です。
あずみ 44 (44) (ビッグコミックス)
小山 ゆう / / 小学館
本気で相手を殺そうと思っている人間の恐るべき観察力で,不幸にも彼はそこに人の無防備さを見いだしたのでしょう。打突系格闘技の習いでアップライトに構えても,首に鋭い一撃を食らうという状態は想定しません。グローブマッチなら,すり抜けて過激を加えられないようにするには両手の間が中抜けしていても十分なのです。
近代剣道では,喉元への加撃をお止め技にしていないところは流石で,それだけ凶器としての剣の使用方法として,根幹的であるということだと思います。
通備系八極の構えでは,人中(鼻の下)から喉,胸までを一直線に防禦しています。低く身構えるだけでも相手から,狙いにくいです。この構えから,自由に拳撃が飛ばせることが前提です。巨体を持つ師が構えをとると驚くほどコンパクトで,何処狙えばいいのよという感じでしたが,兇客と渡り合うことが宿命である武技として合点しました。よほど自信のある人以外は,この手の輩にのど元開けたアップライトで構えぬように。アップライトでも,片腕は軸線上に。古式ムエタイは,流石に首周りの隙はその構えにはありません。硬い肘から先がディフェンスに入ります。
分かっていても,その場で使えるかどうかは,別物。私の学んだ拳は,全て喉元から拳撃が発動します。空手の型の中にも多くはそういう使い方の技が眠っていて,相打ちでも最悪の致命傷は負わないようになっています。武器を持った刺客と戦えることが前提の技は,それなりの仕掛けがあって,其れらは全て収斂します。
襲われたら喉笛にかみつけと以前のアーティクルに書きましたが,人間が一番守るに苦手で,しかも急所として意識されない,かつ攻撃するに有効な場所は,金的や心臓ばかりではないのです。似たような人の襲い方をする人間が,このネット社会,ドロドロと変なイメージを膨らませる人間にはことかきませんので,必ず出てきます。どうか,皆さん,もしも襲われたら,首も気をつけて防護することを。コピー・キャット,類似犯も増えると思う。異常性は,彼の生い立ちなどからも,まったく見いだすことが出来ないタイプという話もあるようなので,彼の心の闇と殺人がどのように結びついたのか,わかりません。分かりませんが,連続殺人を行うような人間は,ものすごい勢いで学習していきます。ある意味,ソルジャーと同じです。人を殺すことで下手な格闘家が一生かかっても理解できなかった領域を手に入れ,殺人のノウハウを学習していきます。この手の,短期間に経験値を上げてくる殺人者は,一番危険です。
誰でも良いと人殺しをする人間は,実際は誰でも良いわけではなく,自分が一方的に暴力をふるえる無防備な子供やお年寄りを狙うわけなのですが,僅かな時間で自信を持った犯人は,老若男女,選ばずにターゲットにしているところが,恐ろしい。この手の輩は,経験値を上げる前に捕縛(あるいは射撃)出来るよう警察には,がんばって貰わなければ行けなかったのですが,犠牲者の中に張り込みの警官が居たと云うことですので,リアルタイムで本気の殺人に熟達しつつある兇人への対応が,どれくらい大変かと云うことを示した事件かなと思います。
犯人が小学校を狙っていたと聞いて,このテキストを書いたときには,犯人の攻撃が最初から子供に向かわなかったの不思議だったのですが,老人とはいえ成人男子を襲って,彼は,感を取ったのかもしれません。子供でなくても殺せると。それなら,より,満足度が高い,大人をも選ぶはず。大型のナイフを振り回す相手に対しては,素手による少々の対武器術では対処できません。
幼い子供たちに,首もやられないように気をつけろなんて云っても,無意味です。守っても,小さな手は,兇刃ではね切られるでしょう。こういう子供をも平気でターゲットにする人の殺人力は,一種の絶望を感じさせるところがあって,狙われたらお仕舞いとしか思えません。凶悪犯罪は減っているはずの一方で,この手の殺人者が妙に目立ちます。
願わくば,もしも自分の妻や息子たちを襲うぐらいなら,その前に私の所に来てくれということだけです。対処できる自信などありませんが,それでも,銃が社会に蔓延するには,まだまだ間がありますし,鎮圧という名の下,殺戮や民族浄化のため火器を持った軍隊が送り込まれているわけでもありません。暴力が充満しているこの星で,私たちの置かれている状況は,ずいぶん分がよいものだと思わねばなりません。平和は,まだ,私たちの手からすり抜けてはいないはずです。平和を教授できる筈の国として,こういった無闇とも言える殺戮に走る人間の出る社会にしてしまったら,何ともったいないことかと思います。
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2008/03/23-19:53 「うなりながら襲ってきた」=両手に刃物−大量の血痕、怒号で騒然・土浦刺傷事件
「刃物を振り回し、大声でうなりながら襲い掛かってきた」。23日白昼、指名手配容疑者の男が通行人らを次々と刺した茨城県土浦市のJR荒川沖駅前の現場では、血を流した男女があちこちに倒れ、怒号が飛び交った。残された大量の血痕が、日曜に起きた突然の惨劇を生々しく物語っていた。
近くに住む塗装工宮崎留雄さん(60)は、駅へ向かう連絡通路を歩いていたところ、反対側から走ってきた無職金川真大容疑者(24)に、いきなり切り付けられた。金川容疑者は「うー」「あー」と怒鳴るようなうなり声を上げ、右手に持った包丁を振り回しながら突進。ぶつかるように右腕に1回切り掛かり、そのまま叫びながら走り去った。
金川容疑者はニット帽をかぶり、黒っぽい上着を着て、左手にも刃物を持っていたという。
同駅の宇佐美博助役(49)は「刺された」「救急車を呼んでくれ」という叫び声を聞いて飛び出したところ、改札前で血を流して倒れている男女5人の姿が目に飛び込んできた。金川容疑者が逃げた方向を追っていくと、通路上にさらに数人が横たわっており、通行人と一緒にタオルなどで手当てした。
近所の主婦(62)は、連絡通路上で首を切られて倒れていた若い男性に声を掛けた。返事はなく、ほとんど意識がない状態だったという。
駅前のスーパーは、警察の要請を受けて発生直後から営業を中止。日曜のため店内には多くの買い物客がいたが、全員が外に出され、付近は一時騒然とした。
茨城県土浦市のJR常磐線荒川沖駅周辺で8人が殺傷された事件で、自宅近くの無職、三浦芳一さん(72)を殺害した容疑で逮捕された同市中村東3の無職、金川真大(かながわまさひろ)容疑者(24)が、「初めは小学校を襲う計画だった」と供述していることが分かった。今月19日に出身校の市立中村小に行ったが卒業式で人が多かったために断念し、その帰りに三浦さんを襲った可能性があるという。
追記ーやはり明確に頸を狙っていたという情報が出ました。次に現れそうなコピーキャットも,その効果を理解したものは頸を狙ってくることでしょう。皆様,通り魔に対しては,どうか頸にはご用心ください。