As the gold medallist of ant hunt.
2008年 08月 17日


Edward O. Wilson / / Johns Hopkins Univ Pr
エントリの公開が遅れてしまいましたが,ブログのタイムマシン機能で。日曜日は,恩師の還暦祝。
私に影響を与えた研究者は何人かおられますが,うち二人は,なぜか蟻の研究者です。もちろん,一人はE.O.Wilson なんてオチではないです。
その内のお一方は,私の研究者のみならず,私の精神生活にも深く影響を与えた恩師です。私が,危機に際して脱出できたのも,恩師の教育的指導の残響が私を助けたのだと思います。何しろ,絶望の淵に沈んでいるときに,何度も私の夢の中に出てきて,戻ってこいと呼びに来られた一人であられましたから。
還暦祝といっても,恩師は大騒ぎなど嫌いで,もとよりお盆ということもあって,来られない人も多く,結果10人ほどの少人数で。ただ,まぁ,メンバーはユニークで,あの「動物のお医者さん」の際だったキャラ,菱沼聖子(ひしぬま せいこ)のモデルとなった獣医学研究者を奥方にされている先輩とか,「不機嫌なジーン」における登場人物のモデルとか,話題には事欠かないメンバーでした。
その席で,恩師は,最近の宝物だと言って,ウィルソンからプレゼントされた上の著作をDパックから取り出して見せてくださいました。
アフリカで100年間,雄のみしか採集記録がなかった種の蟻のワーカーを,あっさり捕獲された仕事の後だったので,「まぁ,アント・ハンターとしての能力はあると認めてくれただけだろう。」といつもの冗談口調でお話しいただきました。
「もしもオリンピックにな,蟻ハンティングという競技があれば,俺は間違いなくゴールドメダリストだな。」
こういう記載論文的における1世紀ぶりの快挙みたいな仕事が出来るのは,恩師が,分類屋の枠組みでかたられるような研究者ではなかったからだと私は思っています。恩師の定義から言えば,そういう研究者こそが分類屋なんですけど,文科省を含めた世間では,分類学という学問やその辺りについての認知もほとんどないでしょう。
社会生物学については,いくつかの大学のマクロ生物系の研究室が感をとって1970年代末に仕事を始めるより遙に早い段階で,当時まだ大学院生だった恩師たちはそれに気がついて,パラダイムシフトを予見し,研究の方向をそれに向けつつありました。
データ盗用で栄光を掴み,最近は「黒人は人種的・遺伝的に劣等である」というトンデモ発言ですっかり評判を落としきったジェームス・ワトソンに,ウィルソンは徹底して虐められたそうです。その結果,ミクロ系生物学に進むのを止めたそうなので,不世出の社会生物学者の産みの親となれば,ワトソンの困った人格にしても,まんざら悪いことばかりでもないなと思われます。彼のDNAの16%は黒人由来ということで,平均的ヨーロッパ系白人の16倍もの黒人遺伝子の優秀さのなせる技かも。
「オレは,教育なんぞ,洗脳以外の何者でもないという自覚のない教育者は大嫌いだ。」「親子二代,公務員〜今は独立行政法人とかで公務員じゃないらしいが〜やったらお仕舞いだ。娘達には絶対,そんなものに成るなと厳命したんで,彼らは普通の就職を選んだ」「柴谷さんには,あんた,人と違うこと態とやって,目立ちたいだけでしょうと言ったら,凄く怒った。本気で怒った。はははは。」「大学は,改革前後で全く偏向した教官が沢山出た。日本の戦前戦後の変節以上に酷い。」「文科省は何の統計的根拠もなく。受験倍率が2倍を切ったら危機的状況だという。」などなど,私が学生時代被れた発言は健在で,2次会までしっかり時間を忘れてしまいました。そう,何処の講演に呼ばれていってもいつものジーンズのままの格好で。
「一月2万アクセス? ブログ? ○○とかと競ったりしているのか?(一応自然科学分野の教官のそれはチラとチェックされているらしい)」
「いえ,いえ,とんでもない。ランキングなんぞやれる中身ではないので,それはやってません。」
「うーん,おまえ,ブログなんかくだらないものやるな。」
はい,先生にそう言われるとそんな気がしてきました。でも,このウィルソンのサインをアップするのは,ちゃんとお許しいただいております。
その場その場で,楽しく軸足を置けるようにリアルタイムに人脈を作る。1次会の会場も,恩師の飲み友達だそうで,ホテルの中にある落ち着いた和食レストランでした。こういう行動規範も,いつの間にか恩師から学んだものです。中心街で飲んでも14Km余を歩いて帰るなどと言う発想も。ゴルゴ13と同じギランバレー症候群を患われて一時期体力的にピンチを迎えたにもかかわらず,相変わらず,ひょうひょうとして,細身で,てくてくと,何処にでも歩いていかれるわけで。
最後に,天の邪鬼なメンバーの流れで結果私が二次会会場の確保で,友人を頼って「あ,猫だけど・・・」と電話しているのを横で聞いておられたらしく,「c_C,おまえ,‘猫’って呼ばれているの?」
「ええ,随分長いです。古い友人の中には,その通り名を本名だと思っている人も居ます。」
「実はな,俺,学生時代,猫って呼ばれていた。」
「えー?,何匹か猫飼ってられた話は聞いてましたけど初耳。」
「友人から,猫気○いと言われるほどだったから。ずっと猫と呼ばれていた。」
そうだったんだと,思わず耳の尖った子供達の写真をお見せしました。
「今は,イヌかネコは?」とお尋ねしたら,「だめだ,家族も俺も家にいないときの方が多いから飼えない。」 そのときだけ少し寂しそうに見えました。
というわけで,やっぱり私の恩師なのだなと妙なところで納得した一日でした。

中2の娘に話したら「今でも血液がスキなのかなぁ」と言ってましたよ。いやぁ~、かなり個性的なキャラだったので、モデルがいるとは思っていませんでした。ビックリ!
いろいろ想像して楽しい気分になっています♪
天下のWilsonの直筆の蟻さんです。めったに見ることは出来ない貴重なイラストです。
