Self-defense for Women


丁度,TAKESANさんの良いエントリを拝見しましたので,女性における護身術について,少し考えてみたいと思います。大学時代に,師による女性を対象とした護身術フォーラムの手伝いをしたことがあります。女性でも男性並みの体力をお持ちの方もお出でですが,そうでない場合が矢張り普通でしてその場合,多くは「技」を機能させるのは困難で,まずは,最低限の基礎体力を付けてもらってから,力の抜き方(といっても必要な筋肉だけに効率よく仕事させると言うこと)を教えるというプロセスにならざるをえないのを実感しました。男でも自分を襲おうというような人間を倒すのは,簡単ではないので,実際致し方ないのです。
 もしも「女性が使える」護身の技を本当に上手く構築できるのならば,それは力に頼って相手に且つ粗暴な技よりも,現実的で役に立つスキルだと思います。でも,これは本当に難しいですね。YouTubeにその手のアメリカの護身術教室の宣伝動画が山のように載ってますが,どれも,逆に危ういなぁと思ってしまいます。なんだかお互いテレながら,料理教室みたいな雰囲気の動画ばかり。上のものは,金蹴り練習などやっておられますが,いわゆる女性のための護身術教室ってのは,良くも悪くもこういう雰囲気のものが多いです。

Rape surviverのためのカウンセリング・プログラムや戦闘技術で知られるRape Aggression Defenseは,流石に,もう一寸緊張した雰囲気が流れています。模擬戦闘とはいえ,本気で力を出して襲う防具に身を固めたボランティア青年をボコボコにするのは,この動画の通り,かなり実践的でそれなりに考えられているのですが,やはり,実戦とは一寸違うなと感じざるをえません。ワイフがもしもこういうのに行きたいといったら,一寸迷います。彼女は,私が結婚する前は,私よりも強い私の後輩に,通備門系八極拳の低空の蹴りを習ってずっと練習しておりました。軌道はかなり危険なところに飛んでくる蹴りです。子供を三人産んだ今は使えるか,一寸怪しいですけど。
 これらのプログラムより,あれをもう一度練習した方が良いと思っています。あれは,確かに人を倒せる技でした。



 戦闘能力を感じさせてくれた女性インストラクターの動画が,上のもので,このブログでは既出です。ロシアの誇るSystemaの対ナイフテクニックですが,武術的には,初歩の初歩を教えている状況なので,そんなにレベルの高いものではありません。それでも,男性に混じりサブでインストラクターを務める女性はちゃんと眼法も出来ていて,一種独特のネコ科肉食獣の光を放っています。それなりの修羅場は知っていそう。 先ほどのRADのプログラムでの動画はいくつかYouTubeにアップされていますが,それらと比べて,このシステマ・ウーマンのレベルの高さは圧倒的です。



 最近,女性を不良外国人から救おうとした男性が,相手に怪我をさせて6年の実刑判決の判例がありました。この例を見ても剛法だけではなく柔法も知らないと,真の意味での法治国家における護身術にはならないという気がします。手加減していても,顔面とかに剛法を使った攻撃技を行うと,「思わず投げ飛ばしてやりました」という弁解に比べると。「思わず殴りました」という弁解は,結果的に警察の心象に悪く働くことが多いと思います。また,急所をやんわりと蹴ってもPTSDになったと逆に訴訟されたりするリスクもあります。そういう意味では,今時護身術はやっかいな問題を含んでいます。私はベランダ越しに暴漢に侵入されて寝込みを襲われたときに,手加減するというか考える余裕が無くて,こめかみと下腹部に蹴りをぶち込みましたが,手加減になっていなかったと思いました。下腹部に入った蹴りは,そこに走っている血管やリンパを傷つけられる深さまで「入った」,とても「嫌な感触」が今でも残っています。一定の打ち方で打ったり蹴ったりすると,内蔵の奥まで「ぬるり」と入る,知っている人だけに分かるあの打人感覚です。
 だからその相手はある意味で「良い人」だったから,後で揉めずに済んだのかなと思ったりしました。隙あらば,私に仕返しするようなことは考えず,ご迷惑をかけましたと,犯人氏からは,あとでマスクメロンまで貰ってしまいましたが,私はそれを当たり前だとも思いませんでした。結果的に運が良かったと思いました。
 暴力系のストーカーだったら,1回勝ったからといって,終わりになりませんで,その後からが面倒になる場合だってあります。相手を傷つけずに制するというのは,一見非現実的な理想のようで,実は,身を守るためには,絶対にそこを目指さないと危ないと思って稽古に励むべきでしょうね。手加減する余裕のない局面はそれはそれとして。

 何処までから過剰防衛なのか,非常にデリケートな問題だと思います。私の師の場合,家に逃げ帰って,刃物を持ってもう一度現れたりしないようにするレベルまでは,過剰防衛とは考えたりしませんでした。状況や相手によっては,二度と会いたくないと思わせるレベルでなければ,ずっとトラブルを抱え込むことだってあります。逆に相手が報復に来なくなるまで何度も何度も返り討ちにした人のお話を知っています。某流派世界大会2位の方で,そこに至ったいきさつについては,ご本人にもどうやら責任があるようでしたが,普通の人だったら精神的に参って最後にはやられていたかも。
 護身,正当防衛といえども,相手に手を出すというのは,場合によっては,余計な縁も出来るわけで,そういうことまで考えての護身術だと思っています。正解はないと思いますが,相手を傷つけないようにするというのは,矢張り基本かもしれませんが,それも,その場の判断で行くしかありません。

 普通の女性は,自分が相手に怪我をさせること自体にも恐怖されます。人を怪我させるよりは,自分が結果的に酷い眼にあった方が,まだ良かったと思われたり,相手を傷つけたこと自信で精神が危うくなったりするのは普通です。だから,身を守る場合,機械的に,最後の極めまでの流れを身につけて貰うしかない場合が多いのです。通用するかしないか,そこまでやって後で考えよう。途中で相手に手加減できる余裕が出来たらそれも良しって。でも,私が強く感じるのは,そもそも女性を襲おうという人間に手加減すると云うことが,結果的に呼び寄せるリスクも,知っておくべきだと思います。極論するならば,過剰防衛かそうでないかなどというものは,非当事者による結果論で,なんとでも言える人のある意味,傲慢で勝手な言葉だと思います。

 コミック「拳児」において,陳家溝を訪れた拳児が大極拳の学校を見学して、そこにいた 清と呼ばれる老女に非常に厳しいことを云われるシーンがありますが,そのモデルになられた女性は,娘時代,暴漢に襲われ,思わず発勁で打ち倒した後,精神を少し病まれたと伺っております。暴漢は彼女の発勁を食らって即死しており,彼女はその直後に行方不明。夜の闇の中を村人が総出で探したら,井戸の中で震えていたということでした。
 この話は,とても象徴的で,高い武技を持っていたとしても,人を決定的に壊してしまうと人は大きなショックを受けます。特に女性の場合,それよりは,自分が傷ついた方がマシだと考えるのは,寧ろ普通だと思います。護身術のモチベーションを持っていただくには,自分も相手も傷つかないというレベルを,目指すしかないのかなと思ったりしますが,これは,短期的に手に入ることはあり得ないので,護身術という短期的に身につけるのが善とされるスキルから考えると矛盾します。

 心法と乖離して成り立つ武技はありません。護身術は下手すると,自分も相手も最悪の傷つけかたをするわけで技とメンタルな部分どのように教えるべきか,理解するべきかそれが最も重要だと思います。
 そういう話もあって,護身術は,いろいろなリスクを含みます。そのリスクを軽減する鍵は,化勁と柔法だと私は思っています。ますますハードルは高くなりますが,それが最善だと,合気道の開祖も考えられていたのではないでしょうか。近代太極拳最強の達人であられた陳家の17世,陳発科老師は,全ての試武で相手を打ち破りながら,無敗。それでいて相手に怪我をさせたり恥をかかせたりしなかったという恐るべき至高の武術レベルで知られております。武技において誰も傷つけない,敵を作る必要がないレベルにあるというのは究極の護身術かもしれません。

 実は,自分が習った技の化勁や柔法への展開については,全く感が取れていなかったのですが,こちらへお邪魔するようになって,いろいろ情報交換していただいている内に,当時解読できなかった師の教えが,パズルのようにするすると填りつつあって,今は柔法への展開を考えるのが楽しくて,自分でも驚いています。
Tracked from COMPLEX CAT at 2008-09-30 13:19
タイトル : Self-defense for Women #2 ‘C..
こちらのエントリにいただいたまるさんのコメントを読んでいて,落ち込ませてしまってはいけないなと思ったのと,その恐怖感が過去経験からリアルだということで,もう少し簡単な方法を検証してみました。いわゆる,後ろを取られて襲われた場合の対処法です。  襲う方の反応や本気度によって,こういうのは結構使えたり使えなかったりするので,この技も微妙な部分は勿論含みますが,いろいろ見た中では,シンプルで,初級?の暴漢には使えるかなと。Women's Self Defense for Rear Assaults : W...... more
Commented by まる at 2008-09-26 10:36 x
年頃の娘を持つ親としてはいろいろ心配なことがたくさんあります。親としては戦うよりは逃げて欲しい。上手に逃げる方法というのはないのでしょうか?
動画は前から襲われた対処法が多いようですが、普通に考えたら後ろから襲われそうな気がするのですが。
Commented by complex_cat at 2008-09-27 01:26
まるさん,腕や体を捕まれたとき相手の手をほどいて逃げるというのは,沢山あるのですが,その場合は,今度はその後逃げ切れるかという保証はありません。
 極論するとこれを知っていれば大丈夫という護身術なんて無いので,使える技のレベルを身につけるしかありません。
>普通に考えたら後ろから襲われそうな気がするのですが。

 仰るとおり,マンションのドアを開けて中に入ろうと思った瞬間に襲われるとかは,想定できますね。ただ極論すると無防備に節路を曝す状態で相手の接近を許した場合,誰でも対処は大変になりますので,護身術の基本としては,先ずその状態を最小化することなのです。

 とりあえず,後ろから首を絞められたりした場合は,1)顎を引いて2)力を抜いて水袋になる。3)股間に腕を振り当てるか4)足の小指の付け根より指二本分奥に入ったところを踵で蹴り落としてスキを作り,反転するように相手の方を向いてふりほどく。この場合,5)相手と自分との間に腕を差し込んで隙間を作りながらやると,とりあえず外れますが,直ぐに金蹴りなどの反撃をしないと,逆に危険で,全く意味はありません。
Commented by complex_cat at 2008-09-27 01:27
1)〜5)の流れは文章や見ただけで感を取れる方は多くないので,ここではこれ以上は無理ですが,拙ブログのエントリ
ttp://complexcat.exblog.jp/9372462/
の一番上の動画,3:06中りに出てくる技をイメージ下さい。一寸高等技ですが。

 顔を見たこともない暴漢から,唐突に襲われる事件も起きていますが,多くの場合,顔なじみ,相対している状態から襲われるケースも特殊ではありませんので。
Commented by まる at 2008-09-27 11:05 x
ご丁寧な説明本当にありがとうございます。中学生の頃、襲われた経験があってかなり怖い思いをしたことがあります。後ろから来られると襲われたことに気づくまでに時間がかかります。(ぼんやり歩いているので。笑)ま、殺されはしなかったのでよかったのですが。娘に対して必要以上に過保護になってしまいます。苦笑
動画を見て・・・「こんな技、できない!」とへこんでいます。基礎体力をつけて、襲われる前に逃げることができれば一番いいんですけど。
いや、一番いいのは襲う人がいない平和な世の中になることですね。ありがとうございました。 
Commented by complex_cat at 2008-09-27 22:00
まるさん,中途で見捨てるようなエントリは書きたくなかったので,とりあえず,「後ろから襲われたら」という課題について,別エントリを書きました。誤解がないようにテキストで説明するのは,本当に難しいです。
 生兵法を喜々として紹介したりしたくないので,免責という意味ではありませんが,かなりしつこい書き方になっています。
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by complex_cat | 2008-09-25 19:08 | Cat Kick Dragon Fist | Trackback(1) | Comments(5)

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